Mr.Eが教えてくれたこと
それは、福岡に住む従兄の部屋でした。白黒写真が壁一面に張り巡らせてあり、そのフォトジェニックな佇まいと共に、今までに嗅いだことのない鼻腔に張り付くようなポマードの匂い。それは夏休みに遊びに行っていた小学二年生の僕には充分過ぎるほどの衝撃でした。
最初に小遣いを貯めて買ったアルバムが小学5年生。発売になったばかりの新しいLPに予約して買うなんて知る由もなく、特典のポスターを無理にオマケしてもらい ちょっとオトナになった気分で急いで帰路についたのを覚えています。
ー それからかれこれ30年 ー
彼はロックスターですが、僕は彼の真骨頂はバラードだと思っています。
何処か異国にいるような錯覚を感じさせる歌詞と絶妙なメロディーの世界。
彼の黄金期を支えた秀逸な作詞家は3人も亡くなってしまったけど、あの頃の歌の世界は、ずっと憧れの世界として今も僕の中で生き続けています。
そしてそれらの音楽以上に魅せられたのが、時折インタビューで目にすることができるブレずに目指したものを追う姿から発せられる信念を持った言葉の数々。若い時に多少の誤解を与える発言があったのは、自分が信じたものに対し周りが付いていけない程に真剣だった裏返し。
憧れとは、対極にあるものに抱く概念だと思います。
音楽以上に過去から現在までにスクラップされた記事の中から、今の自分が置かれた状況に相応しい言葉を見つけて何度も自分を奮い立たせてきました。
まだまだこれからも、そんな彼の言葉と音楽は僕のエンジンとなり血の中に宿っていくでしょう。
矢沢永吉 1949年9月14日 広島生まれ。